(Question)
マーケット・アプローチの一つである類似会社比較方式とは。
(Answer)
類似会社比較方式とは、倍率法、マルチプル法、上場株価比較法とも呼ばれます。
この前提として事業内容や規模が類似した企業の株価水準は、各企業の財務指標に対して一定のマルチプルを乗じることで推定可能であるという仮定があります。
マルチプルに使用する主な財務指標は、売上高、営業利益、EBITDA、当期純利益、純資産や営業キャッシュ・フローなどです。
マルチプルは会社の価値を財務指標で除することで計算しますが、この会社の価値は企業価値を用います。例えばEBITDAを用いたマルチプルは、企業価値/EBITDAとなります。分子に株主価値を用いず企業価値を使用するのは、各企業のレバレッジによるバイアスが調整されるためです。
ただし、マルチプルはそのまま使用すれば良いわけではなく、未公開企業の株式のように流動性が低い場合には、類似企業マルチプルから算定した株式価値から流動性プレミアムとしてディスカウントすることが一般的です。
この類似会社比較方式のポイントは類似会社の選定です。この選定次第でその結果は大きく異なるため慎重に選定する必要があります。この選定のポイントは、事業内容等と株式取引状況に分かれ、これらを総合的に判断し、原則として2社以上を選定します。
事業内容等
主要事業や主要製品の類似性
部門や製品別の売上高構成比
業績及び成長性
企業規模
その他:地域性、販売系列、販売形態など
株式取引状況
買収などの影響により、株価が不安定な状況ではないか
監理銘柄などではないか
上場したばかりの銘柄ではないか
PERやPBRが同業他社と比較して異常値ではないか
類似会社比較方式は、対象会社について比較的少ない情報でも行うことが可能です。ただし、類似会社選定による算定株価のブレは必ず生じます。そのため、類似会社比較方式は、対象企業の初期的株価算定、またはDCF法などの他のアプローチの結果を検証する補完的アプローチの意味も持っており、この類似会社比較方式のみをもって双方が納得できる株価となるとは限らない点に留意が必要です。
※上記の意見にわたる部分は当事務所の見解であり、個別の会計・税務処理に対して何ら保証するものではないことをお断り申し上げます。