社会福祉法人の会計監査の効果

(Question)

平成29年度から導入された社会福祉法人への公認会計士の会計監査は効果を上げたか。

(Answer)

会計監査は一方通行として誤り等を指摘するものではありません。公認会計士の専門性から監査先に最適な指導・アドバイスを行うことも求められます。平成29年度より一定規模以上の社会福祉法人に対する会計監査を義務化し、その効果を把握すべく、翌年、厚生労働省により会計監査を受けた社会福祉法人にアンケートが実施されました。アンケート結果は以下のとおりです。

(一例)

・行政の指導監査は画一的な判断であるが、会計監査は指導的機能を発揮され法人に合わせたレベルで中長期的に改善の道筋を立ててくれた。

・専門的指導を通じた経理担当者のスキルアップ。

・法人運営面、内部統制面改善のための気づきを得られた。

・内部統制を強化する必要性を意識する風土が醸成。

・職員のモチベーションや法令遵守の意識が向上した。

・監事監査の負担が軽減された。

・決算書に専門家の適正意見が付されることから、理事、監事の意識が向上した。

当事務所の意見として、社会福祉法人はその運営について属人的な法人が事が多く、理事・監事・職員が多数いてもまとまった”組織”となっていないと感じている。会計監査はその業務の一環とし法人の内部統制を把握します。その過程で業務や意思決定が属人的となっている点、またそれを要因として法人としての成長が止まってしまっている点が浮き彫りになることがあります。そういった点を的確に指摘し、協議することは法人経営判断に資する重要な情報となります。

ただし、アンケートを確認すると全ての公認会計士が最適なアドバイスを行っているものではないようです。会計監査に関する論点を指摘し、それだけで終了し、行政による指導監査のような画一的なものとなっている実態があることは非常に残念な結果です。

会計監査人を選定する際には、監査報酬のみで決定するのではなく、会計監査人のバックグラウンドや介護福祉事業などの知識を有しているかなどもご確認されると良いでしょう。

※上記の意見にわたる部分は当事務所の見解であり、何ら保証するものではないことをお断り申し上げます。