赤字受注でも利益が出る場合とは

(Question)

私は営業としてガムテープ製品を販売しており、時には得意先から「今回だけ」と言われ、赤字受注をする場合があります。自社が設定した標準原価を下回る赤字受注をする場合、本部管理者の承認が必要になりますが、基本的に赤字受注は承認されます。赤字受注をすると会社は当然に損をするのではないでしょうか。

(Answer)

赤字受注は、これまでの得意先との実績や後日の大型案件を獲得する目的で行われる場合があります。また、管理会計上の問題により、実は赤字受注ではないため、管理者としては承認しているということもあり得ます。

実は赤字受注ではないというのは、営業部門からすると赤字でも、全社としてみると黒字という事です。

前述で変動費と固定費の概念を説明しました。

通常、営業部門に伝達されている製品の標準原価とは、この変動費と固定費の両方の要素が詰まった原価です。「全社としてみると黒字」とは、この構成要素によることになります。

例で説明します。

①販売価格(定価)   100円

②製品原価のうち変動費  △40円

③製品原価のうち固定費  △20円

営業部門としての利益    40円

営業部門に伝達されている標準原価は②+③=60円です。したがって、仮に50円値引し、販売価格(値引後)50円となると、営業部門としては△10円の赤字受注です。

しかし、よく見ると、③の固定費は、売れても売れなくても全社としての費用は変わりません。よって、全社としての受注の意思決定は、以下として考えることになります。

①販売価格(値引後)    50円

②製品原価のうち変動費  △40円

全社としての利益      10円

 

もちろん、このような値引ばかりしていては、全社として本部費などの固定費分が賄えなくなりますし、ブランド価値の喪失などが起きるので、良いことではありません。しかし、継続して発注いただいている得意先の依頼とあれば、断って利益0よりも、10円でも利益が出るのであれば受注するという判断もあるはずです。

※上記の意見にわたる部分は当事務所の見解であり、個別の会計処理に対して何ら保証するものではないことをお断り申し上げます。