固定費型企業と変動費型企業

(Question)

コストを固定費と変動費に区分する方法、その意味を教えてください。

(Answer)

コストの中には固定費と変動費があります(中には準変動費などもあります)。固定費とは、製品をいくつ販売しても費用が変わらないもの、変動費とは販売数量に比例して増加する費用を言います。

【固定費の例】

地代家賃、正社員の人件費、設備リース料、工場減価償却費

【変動費の例】

原材料費、仕入、販売手数料(リベート)、荷造発送費、外注費

【準変動費の例】

水道光熱費、通信費

 

日本企業では、他国にあるような解雇ということに対して非常にハードルが高いはずです。そのため正社員の人件費は固定費とすることが多いと考えられます。

事業・製品における固定費と変動費の比率は、業種や事業戦略により異なり、固定費の比率が高い場合、変動費の比率が高い場合にそれぞれメリット、デメリットがあります。

1.固定費比率が高い場合(ハイリスクハイリターン)

メリット…どれだけの数量を販売しても、費用は固定であるため、販売すればするほど利益率は高くなる。そのため、好況期に損益分岐点売上高を超えた場合、多額の利益を計上できる。

デメリット…予定より販売数量が落ち込んでも一定の費用が発生し続けるため、不況期の赤字転落スピードが速い。

2.変動費比率が高い場合(ローリスクローリターン)

メリット…不況期に販売数量が落ち込んでも、同時に費用も下がるため利益を食いつぶすリスクが少ない。

デメリット…好況期でも爆発的な利益を上げにくい。

したがって、固定費型は攻めの姿勢を表し、変動費型は守りの姿勢を表している。新規事業の立ち上げ時には、リスク回避の観点から外注などの変動費を多用し、市場の状況を見ながら固定費比率を高めるという経営も考えられます。

 

一般的に、ホテルや鉄道、航空会社などは固定費型、小売業や卸売業は変動費型となります。

一点注意なのは、いくら変動費型がローリスクローリターンとはいえ、変動費率の影響は利益額に非常に大きな影響を及ぼします。変動費率が2%変動しただけでも事業運営に大きな損失となるため、変動費型では安易な値引は非常に危険です。

【貢献利益が同額の事業】

  変動費率_低い 変動費率_高
売上高 @100円×1,000個=100,000円 @100円×2,500個=250,000円
変動費 @50円(変動費率50%)×1,000個=50,000円 @80円(変動費率80%)×2,500個=200,000円
貢献利益 100,000円-50,000円=50,000円 250,000円-200,000円=50,000円

【2%値引後】貢献利益に3,000円の差が生ずる。

  変動費率_低 変動費率_高
売上高 @98円×1,000個=98,000円 @98円×2,500個=245,000円
変動費 @50円×1,000個=50,000円 @80円×2,500個=200,000円
貢献利益 98,000円-50,000円=48,000円 245,000円-200,000円=45,000円

※上記の意見にわたる部分は当事務所の見解であり、個別の会計処理に対して何ら保証するものではないことをお断り申し上げます。